トライアスロンの怪我、コンディション調整
トライアスロン人口は近年でも増えている傾向にあります。
オリンピックの種目にもなっていて、注目が高いスポーツです。
スイム・バイク・ランの3つのパートからなり、その距離・競技歴・トレーニング時間などにもよりますが、一定の身体の部位に負荷がかかり過ぎてしまう偏った筋肉の使い方をしてしまうことが原因による慢性的なケガ・障害が多いスポーツでもあります。
ランに関連した障害・ケガが多い傾向にある
多くのケガがランのパートと関係していることが多いというデータが統計学上出ています。
ケガの種類としては下肢のケガ(足首や膝など)、いわゆるランニングやマラソンで起こるケガと似ているものが多いです。
またレース中よりはトレーニング中に起こることが多く、興味深いことに、ある研究では、日本人の選手の中ではバイクのパートに関連する腰痛が多いです。
ランのパートとは反対にスイムのパートでは上肢のケガ(肩の障害など)が多いと言われています。
◎スイムに多い肩の障害・ケガと傷めやすい部位
・肩のインピンジメント症候群
・腱板傷害(棘上筋など)
・上腕二頭筋(長頭腱)の問題
肩のケガなので、肩だけにアプローチすればいいと考えてしまいがちですが、トライアスロンにおいてはバイクのパートにおける前傾姿勢の影響から胸椎の部分の動きが悪くなり、肩に余計な負担がかかっていることがあります。
胸椎の動きが悪くなることで、身体の回旋・捻る動作も上手くできなくなるので自由形で泳ぐ場合は特に余計に肩に負担がくることが多いです。
肩に余計な負担がかかり、筋肉のバランスがくずれることによって、肩関節・肩甲骨の動きが不安定になり、上に挙げたような障害・ケガの原因に繋がります。
トライアスロンでは各パートにおいて、使われる筋肉・筋肉の収縮の仕方(使われ方)が違います。
そういったことがストレスになり障害・ケガに繋がることもあります。
泳ぎのフォームももちろん影響するので、専門家のアドバイスが必要な部分です。
【バイク/Bike】
バイクに乗っている姿勢自体もそうですが、サドルの高さによっては股関節の可動域が余計に制限され、お尻の筋肉など(殿筋群)が上手く発揮できなくなることがあります。
筋肉を上手く使うには適切な長さが必要なのですが、バイクに乗った状態の姿勢では筋肉が本来の長さの状態で使えなくなってしまうからです。
腰椎・骨盤・股関節そして体幹との連動性がとても大切なので、そういった機能をしっかりとトレーニングや施術の際に取り入れていくことが大切です。
股関節周りの問題が原因で起こる膝の痛みもバイクで多い障害・ケガの一つです。
「膝をケガしていないのに何故か膝が痛い。」そんな時は疑うべきものの1つです。
個人的な経験からですが、太ももの前や外側にしびれが出てしまう外側大腿皮神経痛もバイクが原因の一端を担っていることがあります。
さらには、腸脛靭帯炎やアキレス腱障害もバイクと関係することがあります。
それらに加えて、バイクの姿勢が原因の首の痛み、肩こり、腰痛、椎間板へのストレスは実は結構多いです。
バイクに乗った状態で前方をみることにより、頚椎と胸椎の移行部に特にストレスがかかり、首こりにつながることもあります。
【ラン/Run】
レース中においては前の2パート(スイムとバイク)からの蓄積したストレスが原因となり、
股関節や足関節への影響が出ることが多いです。
トレーニング中においてはランニング・マラソンで起こる障害・ケガと似たものが多いです。
スイムやバイクでは重力の影響をあまり受けていなかった筋肉や関節が、ランになることで影響を受けるようになり使われ方が変わるのも要因の1つです。
・腸脛靭帯障害
・アキレス腱障害(ふくらはぎやお尻の筋肉が影響する場合もあります)
・シンスプリント
・足底腱膜障害、足底筋膜炎
これらも競技特性を踏まえた上での根本・原因に対するアプローチが必要になりますが、
ランニングフォームの改善、正しいシューズ選び、足底板の利用なども専門家との相談の上で有効です。
今日はトライアスロン選手に多いスポーツ傷害について書いていきます。
トライアスロンは1回のレースでスイム、バイク、ランの3種目を続けて行う複合持久系競技です。
3つの異なる種目を練習するということで、練習時間や競技時間が長くなり、オーバーユースによる慢性障害がよくみられます。
また実際の競技ではバイクの転倒による急性外傷、熱中症なども多くみられます。
【熱中症】
スポーツ活動中では、体内から多量の熱を発生するため、それほど高くない気温(20℃前後)でも発生する危険があり注意が必要です。
分類 3選
1)熱けいれん激しい運動をして汗をかいたときにおこるもの。
生理食塩水(塩分濃度0.9%の水分を補給して、涼しいところで安静にしていればなおる軽度障害(体温の上昇は通常みられないもの)です。
2)熱疲労発汗があり、体温上昇がわずかではあるがおこる中度障害。
脱水と塩分不足が原因で、全身倦怠感、脱力感、めまい、吐き気、嘔吐、頭痛などの症状があらわれ、血圧低下、頻脈(脈の速い状態)、皮膚の蒼白が起こります。
涼しい場所に運び、衣服を緩め、安静に寝かせて水分(塩分濃度0.2%程度のもの)を補給すれば、通常は回復するとされています。
3)熱射病体温上昇が高度で発汗がみられず、中枢神経障害を含めた多臓器不全
(体内で血液が凝固して、脳、肺、肝臓、腎臓などの全身の臓器の障害)を伴う高度障害状態のこと。
異常な体温上昇(40℃前後以上)、意識障害、吐き気、めまい、ショック状態などを示します。
発症現場での迅速な冷却処置が重要となり、発症から20分以内に体温を下げることができれば、確実に命を助けることができるといわれています。
予防法としては、環境条件を把握し、それに応じた運動、水分補給をおこなうということです。
また個人で体調が悪い場合や睡眠不足などのときは無理な運動は避けましょう。
【過換気症候群】
ケガをしたり記録が伸びなかったりするときに、精神的に不安定な状態になっているスポーツ選手にみられます。特に女子選手に多く発生します。
症状としては発作的に呼吸が浅くなり、頻回になることによって血液中の炭酸ガスが過剰に吐き出されます。
筋収縮の異常といった筋肉症状がみられることもあり、めまいを訴え、手足、唇などに軽い痙攣(けいれん)を起こします。
これらの症状がさらに不安を増幅させ、過呼吸を繰り返すという悪循環になります。
このような症状があらわれたら、まずゆっくりと呼吸をするように指示します。
ビニール袋を口と鼻にかぶせて呼吸を繰り返すと、吐き出した炭酸ガスを再吸入するため次第に呼吸は正常に戻ります。
これらの症状を回避するためには、そのもととなっているストレスや精神的不安を取り除くことがまず大切です。
ビニール袋をかぶせて呼吸をコントロールする方法(ペーパーバッグ法)は、その有効性が疑問視されており、逆に過換気症候群以外の過呼吸状態(心筋梗塞、気胸、肺塞栓など)にある場合は、症状を悪化させることがわかっています。
これらを見極めるのは素人にはむずかしく、ペーパーバック法そのものの対応も医療行為となります。
過呼吸状態にある場合の対応については、まず本人を落ち着かせてゆっくり呼吸することを指示し、脈などのバイタルサインを確認しながら、病院へ行くかどうかの判断をするようにしましょう。
【腸脛靭帯炎】
腸脛(ちょうけい)靭帯は腸骨(腰の骨)と脛骨(足の骨)を結ぶ長い靭帯で、膝の外側を安定させる役割があります。
この靭帯は膝の屈伸時に大腿骨(太ももの骨)の外側を移動するようになっています。
長距離ランナーなどによく見られることからランナーズ・ニーとも呼ばれています。
ランニングでは膝の屈伸が繰り返されることによって、靭帯と大腿骨の間で摩擦が生じ、炎症を起こすことがあります。
特に大腿骨が普通よりもより外に大きく出ているときや、O脚がひどい場合、かかとの骨が大きく内側に入り込んでいる場合などはさらに腸脛靭帯にストレスを与えることになります。
これらの組織の刺激は走りすぎたり、シューズや身体のアライメント(骨格上の構造)によるショックアブソーバー(衝撃吸収)が不十分であるときに出現します。
オーバーユースが原因で筋肉が硬くなっているので、筋肉の緊張を和らげることが回復につながります。
靭帯の付着部のみではなく、お尻の筋肉や太ももの筋肉、下肢の筋肉までゆっくりとほぐしていくこと、十分な休息を取ることが大切になってきます。
【足底筋膜炎】
足の裏側にある足底筋膜はランニングやジャンプなどのときに伸びたり縮んだりして、
衝撃を吸収するスプリングの役目をしています。このため長距離走などで使いすぎると炎症を生じます。
スポーツ選手に限らず立ったり歩いたりすることの多い一般の人でも炎症を生じることがあり、
扁平足の人は特になりやすいです。
原因は使いすぎによるものだけではなく、
・足の形の異常
・下腿三頭筋やアキレス腱の柔軟性の低下
・足の筋力低下
・シューズの不備
などがあげられます。
症状としては足底部に圧痛があり、走って着地のときに踵の近くが痛み、足底筋膜にそって緊張が起こり、圧痛がみられます。
運動後にRICE処置を行い、足底のストレッチなども効果的です。
【偏平足障害】
足部の縦アーチが少なく、力学的に弱いために歩くときに過剰な足の内側ひねりを起こし足底筋膜や後脛骨筋(こうけいこつきん:ふくらはぎの後ろの筋肉)
に過剰な負担がかかって痛みを生じるようになります。
特に外脛骨という種子骨のような骨が存在すると、これが刺激となることもあります。
ランニング時の足底または足部内側の痛みがみられ、立った状態で足部のアーチをみると通常より低く、偏平足を示すことが認められます。
着地の際の外力を和らげるためには大腿四頭筋やハムストリングス、またふくらはぎの筋肉、足底のアーチの保護などが有効で、これらの筋力強化やストレッチを行い、アーチ形成のためのパッドやテーピングなども活用することが効果的です。
また足底の筋力強化のためのタオルギャザートレーニングなどもとりいれるとよいでしょう。
【腰椎椎間板ヘルニア】
腰部にある椎間板は日常生活やスポーツ動作で大きなストレスを受けやすく、特に前屈と腰の捻りの動作が同時に起こる場合にそのストレスは高まります。
この状態が繰り返されることで椎間板内の線維輪の変性がおき、やがては背部の神経を圧迫するようになります。
この状態は一般的には椎間板ヘルニアとして知られています。
特に下肢への神経痛が見られ、神経の圧迫されている側の筋力低下、前屈や捻り動作で痛みが増強します。
どのスポーツにおいてもみられますが、一般的には20歳以降によく発生します。
急に痛みが出た場合はRICE処置を行い、背部の炎症を抑えるようにします。
その間、膝を折り曲げた「えび型」の姿勢で安静状態を保つようにしましょう。
状態が安定してきたら、出来るだけ早く腹部と腰部の筋力強化トレーニングを行うようにします。
腰椎にかかる負担を出来るだけ軽減するように、腹筋の強化に努めることが大切です。
おおむね保存(手術をしないでリハビリトレーニングなどを中心に行う)療法で症状の軽減が期待できますが、3ヶ月~半年経っても症状が変わらない場合は、手術療法で変性した線維輪を除去する方法をとることもあります。
手術をした場合、選手が競技復帰するまでに6~8週間程度、コンタクトスポーツ(衝突のあるスポーツ)に関しては3ヶ月ほどリハビリ期間が必要となるでしょう。
【梨状筋(りじょうきん)症候群】
梨状筋(りじょうきん)は仙骨(お尻の真ん中の骨)から始まり、足の付け根につく筋肉で股関節を外旋(足先を外に向ける)させる働きがあります。
この筋が炎症を起こしていたり、過度の緊張状態になるとその下を通る坐骨神経を圧迫し神経の走行に沿って痛みがでます。
時には太ももから足先にかけてまでしびれることがあり、スポーツ選手によくみられます。
使いすぎによる炎症であれば、アイシングなどで抑えます。
過度の緊張状態で感じられるような足先の突っ張り感があれば、筋肉の緊張をほぐす意味で梨状筋にストレッチを取り入れていくのが効果的です。
また太ももの前後の筋肉:ハムストリング(裏:大腿二頭筋)と大腿四頭筋をバランスよく鍛えていくことも大切です。
普段から腰に負担のかかる姿勢を長時間とらない、重いものを持ち上げるときの体勢に気をつける、疲労がたまらないようストレッチをして柔軟性を保つ、体重増加に気をつけるなどのセルフ・ケアを心がけましょう。
以上が当院に来院されるトライアスロン選手にもよく見られるスポーツ傷害です。
トライアスロンは想像通り過酷な競技です。
身体に負担をかけるのは当然なので、いかに身体のケアをしながら、故障のリスクを減らして練習を行えるかが大切だと思います。
身体に異常を感じたらすぐに治療にきていただきますようお願いいたします。
【当院の施術】
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